あの夏の季節が僕に未来をくれた



お経を唱えるお坊さんの声。


青白く光る灯籠。


仏壇の前で紫と金の袈裟を広げて座っているお坊さんの奥にある、弟の遺影を見つめながら……


俺は制服に身を包み、父や母と共にリビングの隅にある四畳ほどの畳に座っていた。


夏休みも中盤になり、世の中はお盆休みに入っている。


我が家も弟の新盆を迎え、寺の住職に来てもらい、お経をあげてもらっていた。


最近起きた、不思議な現象についてはまだ記憶に新しい。


もしかしたら、あれはお盆が近づいたことによるものなのかもしれない、と雅紀は思っていた。


一年に一度だけ死者の魂がこの世に戻ってくる日。


今年は弟にとって、初めてのお盆でもある。


だから死んでしばらく経ったこの時期に、急にひょっこり現れたのかもしれない。


あれから……


母に話をしたあの日から、俺の奇妙な行動はピタッと止まった。


その時は何故なのかわからなかったけど。


数日後の今日――


新盆を迎えて妙に納得したんだ。


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