あの夏の季節が僕に未来をくれた
だけど俺が先生にかけられる言葉なんか見つからなかったし。


もし……あいつが何か伝えたんだとしたら、余計なことは言わなくて良かったのかもしれないとも思う。


先生と弟のことは、あの二人にしか解決出来ないものだし、俺がどうこう言えるものでもないから……


「雅紀はどうなんだ?」


急に話を振られて、俺は頭がついていかなかった。


「……なにが?」


「彼女とか、いないのか?」


(えっ、そこ?)


だってさっきまで母に男はそんなこと言うわけないとか言ってたよね?


「や、俺は……それどころじゃなかったっていうか……」


まさか自分がそんなことを聞かれると思わなかったから。


俺は口ごもりながらそう言った。


「まあ、そうだな?

いろいろ大変だったしな……

でも、これからはたくさん恋愛しろよ?

それで彼女とか連れてこい」


弟の分まで……


父はそこまでは口にしなかったけれど、なんとなくそう言いたかったんじゃないかって思った。


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