あの夏の季節が僕に未来をくれた
俺はこれからあいつの分までいろんな経験をして、幸せにならなきゃならないのかもしれない。


以前の俺ならそれが重荷になっていただろうけど、今は違う。


2倍の幸せを手に入れるために努力すればいい話だ。


「そうだね、まあ…その前に好きな人作んなきゃだけどね?」


ハハッと照れ隠しに笑いながらそう言えば、父も母もまたそれにつられて笑う。


話を俺に切り替えたことで、もう誰もがあいつと先生のことは口に出さなかった。


きっと心配したところでどうにもならないことをここにいる全員が知っていたから。


その代わり、俺にあいつの分まで恋をしろよって。


あいつの分まで幸せになれよって。


そう言いたかったのかもしれない。


俺は俺で、そんな父や母の気持ちを汲むことが出来るようになっていた。


いじけてあいつの亡霊に嫉妬していた俺はもういない。


あいつの分までなんておこがましいことは言えないけど、俺は俺のために一生懸命生きるだけだ。


< 219 / 248 >

この作品をシェア

pagetop