あの夏の季節が僕に未来をくれた
「次の方~」
ドアから入ってくる少年を見て、ニコッと笑いかける。
「こんにちは
ちょっと先生に、お話聞かせてくれるかな?」
虚ろな目をした少年が口を開く前に、後ろから付き添うように入ってきた母親に遮られた。
「学校に行かないって言い出して、友達もいないみたいなんです
いじめが原因なんじゃないかと思うんですけどね?
先生が全然聞く耳持ってくれなくて
うちの子は優しいから、友達の言うことにも反論できないんだと思うんですよ
それから……――」
うんざりするような母親の怒濤の言い分に、思わず顔をしかめた。
不登校で母親に連れてこられる子供は、高い確率で過干渉である場合が多い。
特に母親からの過度な愛情。
それゆえに子供もまた母親に依存する。
共依存は、両方とも自覚がないため、なかなか難しい。
俺は気づかれないように小さくため息をついた。