あの夏の季節が僕に未来をくれた
その息の荒さが妙に艶かしくて……


幼い顔とのギャップにクラクラしながら、俺はそのとき彼女を手に入れるって決意したんだ。


保健室で試験を行う許可を取ってくれた彼女は、良かったね、と言いながら嬉しそうに笑う。


正直、1時限目の試験がほとんど出来てない時点で、俺はもうダメだろうなと内心思っていた。


だけどあまりにも一生懸命に試験を受けさせようとする彼女の手前、俺はそんなそぶりも見せずに頑張ってるふりをした。


試験監督も兼ねることになったらしく、初めての経験なのか妙に緊張しているのが見てとれる。


思わず笑ってしまいそうになるのを何とか堪えて、鉛筆を動かした。


ちゃんと問題が解けているのか気になる様子の彼女は、心配そうに俺の手元を覗きこんだ。


「どう?難しい?」


「プッ!」


思わず吹いてしまった。


いやいやいや、いくらなんでも試験中に声かけちゃまずいだろう……


可笑しくて肩を揺らしながら笑っていると、なんのことだかわからないと言うように、頬を膨らませて可愛く俺を睨んだ。


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