あの夏の季節が僕に未来をくれた
「心配してるのに、何、それ?

バカにしてるでしょ?」


ちょっと若いと思ってさ、と膨れっ面ですね始める彼女はとても年上に見えない。


「試験中に声かけてくる先生もどうかと思うんですけど」


目尻に浮かんだ涙を手の甲で拭いながら、まだ止まらない可笑しさを噛み殺して彼女に言った。


するとようやく意味が呑み込めたのか、彼女の顔が一瞬にして真っ赤になる。


「ごっ、ごめんなさい!」


そうよ、そうよね……、私何やってんだろ?と言いながら、自分のしたことが恥ずかしかったのか、少し離れた椅子に座った。


必死に先生としての威厳を保とうとしてるのか、さっき拗ねてしまった自分を反省してるのか、背筋を伸ばして真面目な顔で俺を“監督”しているみたいだ。


そのくるくる変わる表情に、俺はどんどんはまっていく。


さっき、休み時間に心配して来てくれた兄にまで嫉妬するほどに……


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