あの夏の季節が僕に未来をくれた
チャイムが鳴って2時限目の試験の終わりを告げる。


俺は鉛筆を置いて、椅子に体をもたれさせ大きく伸びをした。


先生は答案用紙をピラッと持ち上げると、ちょっとだけ気まずそうに微笑んだ。


「じゃあこれ、職員室に持っていくね?

次の問題用紙も持ってこなきゃいけないし」


そう言って慌てて保健室を出ていこうとする彼女の背中に笑いを堪えながら声をかける。


「先生?

もう走んなくてもいいからね?」


彼女は一瞬、走ろうとしていただろう足を止めて振り返ると、わかってるとでもいうように照れた顔で笑いながら、今度はゆっくりと足を進めた。


こんな気持ちは初めてだった。


自分の有り余る精力をぶつけるためだけに甘い言葉を囁いていた今までとはまったく違う。


そばにいて居心地がいいと感じるこの感覚……


彼女の前だとホッとするような、安心するような、優しい気持ちになれている自分に気付く。


別に今までだって優しくなかったわけじゃない。


だけど優しくするのは足を開かせるため……


自分の欲望を受け入れてもらうため……


ただそれだけだった。


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