あの夏の季節が僕に未来をくれた
パニック障害という心の病を抱え、乗り物にはほとんど乗れなかった。


それはまだそんな病名が世間に認知されていなかった頃からのもので、母はいろんな病院に弟を連れて行っては原因が分からず落胆する日々が続いた。


俺はそんな二人を見ながら、自分だけはしっかりしなくちゃと子供心に思ったものだ。


だから他人から見たら、俺はずいぶんと大人びた小学生だったと思う。


中学に入ってからも、俺は頼れる兄貴として、弟の様子を見守っていた。


あいつが具合が悪くなれば率先して保健室に連れて行った。


あの頃は自分の幸せよりも、弟の心配ばかりしていたような気がする。


だけど俺はそんな自分が嫌いじゃなかった。


あいつの役に立てていることが嬉しかったし、母から頼りにされることも誇らしかったのだ。


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