あの夏の季節が僕に未来をくれた
「名前」


「えっ?」


「名前は何て言うの?」


まだ名前も知らなかったことに気づいて、俺はそう聞いてみた。


あぁそっか、まだ言ってなかったっけ、と呟きながら、彼女は恥ずかしそうに名乗った。


「宮城すみれ」


「へぇ~すみれちゃんか
なんか合ってる」


「ちょっと!先生でしょ?

せめてすみれ先生って呼びなさいよ」


そんな会話をひとしきりしたあと、兄貴が迎えに来て俺は帰らなきゃならなくなった。


もっと彼女と話していたかったけど、そんな我が儘を言えば俺がガキだと言ってるみたいで諦めた。


友達にも心配かけたし謝らなきゃならない。


「じゃ、先生、またね?」


笑顔で先生にだけ見えるようにウィンクすると、彼女はまた恥ずかしそうに笑って小さく手を振ってくれた。















そしてこれが……






俺と先生との短い恋の始まりだった。
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