あの夏の季節が僕に未来をくれた
「あの日……」


ふいに彼女が口を開いた。


「えっ?」


「彼が死んだ日の朝……携帯に電話して……彼を起こしたの……

ほら、あの人朝が弱かったでしょう?

だから毎朝モーニングコールしてたんだ……

学校には行けなかったみたいだけど、朝はちゃんと起きた方がいいよって……

だからもしかして最後に話したのって……

私かもしれないね?」


彼女は静かに笑みさえ浮かべ淡々とそう言った。


その日を懐かしむように……


弟を……思い出しているかのように……


あいつは死んだのに!勝手に死んでいったのに!


なんでみんなあいつを責めないんだ……


「あいつは、あんたを置いてとっとと逝っちまったんだぞ?

もっと怒ったっていんじゃないの?」


そう言ってみたけど、彼女は力なく首を横に振る。


「悩んでたの……

普通の生活が出来ないことに……

学校だってもっと行きたかったんだろうし、部活もやりたかったんだと思う」


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