あの夏の季節が僕に未来をくれた
そんなある日、大学病院の脳外科で検査をした弟は、何の異常も見られなかった代わりに、精神科を紹介された。


母は最初は渋っていたものの、弟の強い希望で都心にある精神科を受診することになった。


たぶん、自分の症状がなんなのかを知りたかったんだと思う。


なぜなら病名が分からないほど、不安なものはないからだ。


精神科を受診したその日に、弟に初めて病名がついた。


人混みだと過呼吸や痙攣を起こしてしまうパニック障害というものだった。


母は精神的な病気だと聞いて少なからずショックを受けていたようだったが、弟はやっと自分の病気がなんなのかを知ることができて、逆に喜んでいた。


だけど、病名が分かったからといって症状が簡単に治まるようなものではなく、この先弟にとって辛い日々が始まる。


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