あの夏の季節が僕に未来をくれた
「――ッ!」


その瞬間……


俺は信じられない思いでいっぱいだった。


なぜならベッドにいたはずの先生が、いつの間にか俺の背中から腕を回して抱きついてきたから。


背中越しに伝わる先生の吐息が涙が、俺のシャツを濡らしていく。


声を立てずに忍び泣く彼女を俺は堪らなく愛しいと感じた。


先生……?


俺、うぬぼれてもいいのかな?


きっと先生も俺と同じ気持ちだったのかもしれない。


このままさよならしたら、もう二度と会えないと感じたのかもしれない。


「こんな……」


「……えっ?」


俺の背中に顔をうずめたまま何かを言ったような気がして聞き返した。


「こんなはずじゃ……なかったのに……

先生でいなきゃいけないのに……

生徒に……こんな……」

彼女は自分の立場と感情の狭間で揺れてるみたいだった。


10も年下のお子ちゃまに惹かれていることに戸惑うように……


自分の胸にしがみつく手をそっと掴むと、俺はくるりと反転して彼女を自分の胸に収めた。


あの受験の日からまた伸びた身長は、彼女の背が小さくなったような錯覚をさせる。


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