あの夏の季節が僕に未来をくれた
高校受験を迎えた冬


あの日はとても寒かった。




雪が降ってもおかしくないくらいの冷え込みに、体を震わせながら学生服に身を包んで、志望校まで一緒に歩いたっけ。


普段はひょうきんで明るい性格だった弟には友達もたくさんいた。


その日も俺だけじゃなく一緒に受験する仲間五人で会場に向かっていた。


陽気な弟の周りにはいつも友達がいて、双子の兄弟だった俺は、あいつの友達が自動的に自分の友人になっていた。


みんなは俺を硬派な男だと思っていたようだった。


弟はその性格から軟派とまではいかないが、場を盛り上げる天才で、双子だというのに正反対の性格だった。


もし弟が病気でなかったら、自分の存在価値はあったんだろうかと思う。


ほんとなら俺が病気になってたっておかしくないのに……


神様は意地悪だ。


あの頃の俺は、弟を見守る役目を受け入れながらも、両親や友達から大事にされる弟に嫉妬していたのかもしれない。



あいつの気も知らないで、自分が注目されたくて弟じゃなく俺が病気になれば良かったと思ったことがあるなんて……


今となっては誰にも言えないけれど……
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