あの夏の季節が僕に未来をくれた
しばらく不思議に思って突っ立ったまま、辺りを見回していた。


そしてそれが自分の頭の中から聞こえてくるのだと気が付いたのは、もう一度その声がした時だった。


《兄貴は考えすぎなんだよ》


――兄貴?


まさか、あいつはもういないはずだ。


幻聴なのか?それともこれは夢?


《母さんも父さんもちゃんと兄貴のこと愛してくれてるよ?》


いったいなんなんだ……?


何でそんなこと言うんだよ……


《兄貴がそんなんじゃ、俺いつまでたっても成仏出来ないじゃん》


――はっ?


成仏ってことは……幽霊?


嘘だろ?


「誰なんだよ!ふざけんな!」


思わずそう口に出して叫ぶと、ちょうど同じ通学途中の生徒にジロジロと見られてしまった。


その瞬間、頭の中から今度は噛み殺したような笑い声が聞こえる。


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