あの夏の季節が僕に未来をくれた
やっぱり空耳か、幻聴だ……そう思った。


今朝、あんな夢を見たからかもしれない。


弟に申し訳ないと思うあまり、俺に見せた白昼夢。


学校について、俺は気分が悪くなった。


さっきの変な体験のせいかもしれない。


誰に言ったって信じてもらえないだろう出来事に、心配する友達を前にして俺は口をつぐんだ。


ただ、弱々しく笑みを浮かべて……


おせっかいな女子達が、保健室に連れていこうと言い出した。


頭がガンガンする。


だけど保健室には彼女がいるんだ。


行きたくないと思った。


今、彼女に会いたくない。


半ば引きずられるように、俺は保健室にいた。


あの日、俺が泣かして以来の彼女の姿……


元気そうに見えたあの時とは違って、先生の顔は明らかに疲れていた。


痛々しいその姿を見て、俺は唖然とする。


気丈に見えた彼女に、いったい何があったんだろう?


俺をここに連れてきた奴らはすでにもういない。


二人きりの空間に気まずさを感じながら、彼女を窺うように見る。


彼女もまた俺の顔を見ると、複雑そうな笑みを浮かべた。


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