あの夏の季節が僕に未来をくれた
「久しぶりだね?元気だった?」


痩せ……た?


俺に声をかける彼女を見ながら、そう思った。


元々細かった彼女の体は、折れそうなくらい弱々しかった。


「先生は……あんまり元気そうじゃないね?」


質問に質問に返されたことを特に気にするでもなく、先生はフッと笑って首を傾げる。


「そう……かな?

割と元気なつもりだけど……」


鏡で自分の姿を見てみたらいいのに、と俺は思ったけれど、自分を元気だと言い張る彼女にそれ以上は突っ込まなかった。


この人を見てると、なんだかとても意地悪したくなる。


弟の思い人だったからなのか、それとも自分が気になるからなのか、よくわからないけれど……


ふと今朝の出来事を話してみようかと思った。


彼女なら、もしかしたら信じてくれるかもしれない。


そう思って口を開きかけた時、ふいに先生が呟いた。


「彼の……夢を見るの……」


「……へっ?」


先を越されて俺は間抜けな声を出してしまう。


「なんだかいつも悲しそうに笑ってて……

一人で寂しいのかな……とか……

考えちゃうんだよね……」


(おいおい、まさか後を追うつもりじゃないだろうな?)


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