あの夏の季節が僕に未来をくれた
「いつも無言……かな?

何も言わずに悲しそうに笑うだけ」


そう言うと、彼女は可笑しそうにクスクス笑う。


「だからね?

説教でも苦情でも、彼の声が聞けるならそれでもいいのにって

あなたの話聞いて思っちゃった」


(おい、聞いたかよ?

俺に説教なんかしてないで、彼女に愛の言葉でも囁いてやりゃいいのに……)


そう頭の中で思ったけれど、こういう時に限ってあいつは現れない。


「もし、また声を聞くことがあったら、あいつに伝えとくよ」


わざとおどけてそう言うと、彼女は信じてるのか信じてないのかニッコリ笑って頷いた。


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