あの夏の季節が僕に未来をくれた
体に違和感があればすぐに相談したし、何かいいことがあれば報告したりもした。


そのたびに彼女は親身になってアドバイスをくれたし、いい報告には本当に嬉しそうに喜んでくれたんだ。


実際、俺が自分で命を絶つまでに、すみれちゃんに会えたのは数えるほどしかない。


兄貴に自分が彼女なんだと告げたのは、俺に対する償いだったのかもしれない。


それとも、将来俺が成人したらそうなることを考えてくれていた?


だって、実際には俺たちは付き合っていたわけじゃなかったし、彼女に触れたのもあの保健室での一度きり。


彼女を手に入れることなく死んでしまった俺に、伝えたかったんだろうか?


気持ちの上では彼女だったんだよって……


そんな彼女を見ていたら、俺は簡単に成仏することなんか出来なかった。


彼女には幸せになってほしかったし、罪悪感なんか感じなくてもいいんだって伝えたかった。


そう思ってずっと彼女の周りを彷徨いた。


けれど彼女は俺に全く気付くことなく、勝手に俺の夢を見て勝手な解釈をして泣いてる。


俺の呪縛から早く解き放たれて欲しかった。


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