あの夏の季節が僕に未来をくれた
だけどそれが出来ない状況に俺は成す術もなかったんだ。


だから……


俺の頭の中にネガティブな思考が流れてきた時……


なんだか懐かしいその波長に俺は吸い寄せられたのかもしれない。


そしてそこには、相変わらず自分を悲観する兄貴の姿があったんだ。


俺は兄貴に声をかけてみた。


最初はそら耳だと思ったんだろう。


キョロキョロ辺りを見回して、首を傾げてる。


まったく相変わらず兄貴には世話が焼ける。


もっと素直になったらいいのに……


母さんや父さんは、兄貴を俺の兄貴だった顔しか知らないんだから。


兄貴は大丈夫だといまだに思ってる。


だってあの子は昔からしっかりしてるから……


ほんとに世話のかからないいい子よね?


そんな声が聞こえてくる。


兄貴もそう思われることに慣れてしまったのか、それともそんな理想像を崩したくないのか……


ほんとはそんな仮面なんか外したいと思ってるくせに兄貴はそうしない。


そしていつまでも、あいつが羨ましい、あいつは好かれてるから、なんて俺を引き合いに出して僻んでるんだ。


< 65 / 248 >

この作品をシェア

pagetop