あの夏の季節が僕に未来をくれた
あれから……
あいつはまったく話しかけてこない。
卑屈だなんて言われて、俺から遮断したくせに、何となく気になっていた。
あれが本当にあった出来事なのかも、今となっては怪しいけれど……
教室の一番後ろの窓際の席で、空の雲が流れていくのをボーッと眺めながらそんなことを思う。
エアコンの程よく効いた室内は、窓から降り注ぐ太陽の光と相まって眠気を誘うのには充分だった。
うとうと眠ってしまいそうになりながら、先生の声が子守唄のように聞こえて、俺の睡魔にとどめをさす。
カクンと何度も落ちそうになりながら、気がつくと俺はすでに夢の中だった。
弟がこちらを見て意味ありげに笑ってる。
なんとなく気まずさを覚えながら、俺はこの間彼女が話していたことを思い出した。
『何も言わずに悲しそうに笑うだけ』
そう言ってたっけ。
俺の夢の中のあいつは確かに笑ってるけど、彼女の言うように、悲しそうなんかじゃなくて……
どちらかというと挑戦的な眼差しを、俺に向けているように見えた。
それがなんだか無性に腹が立って、夢の中の弟を思いきり睨み付ける。