あの夏の季節が僕に未来をくれた
もちろんあいつは動じることなく、何か言いたげにこっちを見ているだけだけど……


夢だとわかっていても、文句を言ってやりたかった。


(何か文句でもあんのかよ!何が言いたいんだ!)


そう言ってやりたかったのに……


喉が詰まって声が出ない。


だけど弟はそれが聞こえたかのように、悲しげに俯くと、闇の奥へと消えていった。








「……ぃ……おい……きい……」


何だ?


なんか聞こえる。


よく耳を澄ませて聞いてみた。


「おい、聞いてんのか?」


ハッとして我に返った。


そう……目が覚めたというよりは我に返ったという感覚。


辺りを見回すと、もうとっくに授業は終わっており、俺の机の周りには有り得ない程の人の数。


(……えっ?なんだこれ?)


そう思ったと同時に、さっき俺に話しかけていたと思われる男子生徒が、また話し出した。


「何、ボーッとしてんだよ

さっきまであんなに喋ってたくせに」


それを聞いて俺はますます混乱する。


< 69 / 248 >

この作品をシェア

pagetop