あの夏の季節が僕に未来をくれた
「え……あの……」


呆然としながら今のこの状況を理解しようとするが、まったくわからない。


「なになに?

お前、大人しいクールなやつだと思ってたのに、意外としゃべるんじゃん

照れんなよ」


喋るって……


俺、寝てる間になんか喋ってたのか?


そんな俺の様子を不思議そうに眺めながら、机の周りにたむろしていた生徒たちは、一人二人と離れていく。


最後まで残っていたのは、さっきから話しかけてくる男子生徒一人だった。


「まぁ、また話そうぜ?
結構面白かったからさ

俺、佐伯徹、よろしく」


「あ……あぁ、よろしく
俺は……」


「青木だろ?

青木雅紀、知ってるよ

お前は俺のこと、知らなかったろ?

いつも我関せずって顔してたもんな」


ヘヘッと人懐っこい笑みを浮かべながらそう話す佐伯のことを、俺は確かに知らなかった。


佐伯だけじゃない。


クラスの誰の名前も覚えてない。


あいつが死んで新しいクラスになってから、誰とも関わらずにひっそりと過ごしてきた。


中学から一緒だったやつらとクラスが離れたこともあって、余計に俺はこのクラスで孤立していた。


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