あの夏の季節が僕に未来をくれた
あいつが死んで、自分の役割を失った俺は、どうしても自分自身の存在価値に疑問を抱いてしまう。


兄貴という役割が無くなってしまったら、俺に残るものはなんだろう?


いつもそんな風に思っていた。


両親は揃って俺をいい子扱いした。


それはあいつがいた頃は誇らしくもあったのに……


今となってはただ放任されているだけのような、扱いづらいものを腫れ物に触るみたいに接してくるような……


そんな気持ちにしかならなかった。


友達だってそうだ。


中学から一緒だったやつらは、今までと変わらずに接してくれたけど。


それでもあいつ抜きに付き合うのは、結構しんどい。


弟の友達がそのまま俺の友達……


そんな環境は友達さえも薄っぺらい関係だったんだと思い知らされる。


あいつが死んだことで、みんなが俺に気を遣う。


それは俺にとって、ものすごく居心地の悪いものだった。


だから……


このクラスで自分から友達を作るなんて、かなりハードルが高くて。


だったら一人がいいやなんてカッコつけて、自分の殻に閉じこもるしかなかったんだ。


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