あの夏の季節が僕に未来をくれた
だから、俺は兄貴だけの友達を作ってやりたかった。


佐伯は兄貴の友達候補としてうってつけだと思った。


なぜなら、俺がそうだったからわかる。


クラスのムードメーカー的な存在。


それは人に気を遣うからこそ成せる技だ。


お調子者たちとつるむのは楽しいが、反面いつもそればっかりでは疲れる。


自分とは正反対の落ち着いていて冷静な……でも心優しい穏やかな相手が欲しくなる。


カラカラに渇いた喉を潤すような一滴の水が……


兄貴と俺は月と太陽。


たんぽぽとひまわり。


マイナスとプラス。


だからこそ引き合うのだと。


佐伯にも俺と同じ匂いがした。


きっと兄貴みたいなタイプと合うはずだ。


そう確信したから。


声をかけてみたんだ。


授業が終わってもまだ眠りこける兄貴に変わって……


以前のように、生きていた頃のように、明るく面白おかしく。


当然、教室にいたクラスメイトは驚いていたけど、佐伯も加わってることで、自然に人が集まり始めた。


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