あの夏の季節が僕に未来をくれた
だから俺も弟の分まで頑張ろうって決めた。


佐伯に負けないような夢を自分も見つけたいって。


そう…思ったんだ。


それが何なのか、それはまだわからないけど、とりあえず勉強だけはしっかりしようって。


志望大学はそれから決めればいい。


父や母は許してくれるだろうか?


俺が大学に行くことを……


希望なんかを胸に抱いて進学することを……


弟の分まで頑張る……とか言えば学費とか出してくれるのかな?


そんな姑息なこと考えてるなんて夢にも思ってないだろうけど。


「俺も進学するよ」


そう言ったら佐伯は一瞬驚いた顔をしたけど。


次の瞬間には嬉しそうに笑って、そっか頑張ろうぜ?なんて言ってくれた。


嬉しかった。


それだけで頑張れるような気がした。


そのくらい俺にとって佐伯は、もうなくてはならない存在になっていた。


初めて得る充実感は、嬉しくもあり、同時に怖くもあった。


一度知ってしまった幸せは、手放すのが怖くなる。


未だに不思議がられる初対面の時の様子は、やっぱり何も覚えてなくて……


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