あの夏の季節が僕に未来をくれた
それがもしかしたら佐伯を失う原因になるんじゃないかって、心の底では不安だったけど。


佐伯はそれを事も無げに解消してくれた。


「ま、あんときのことをお前が覚えてなかったとしても、関係ないけどな?」


関係ないって……


それがきっかけで友達になれたんじゃないのかよ……


そんな風に思ったけれど、口には出せなかった。


だけど佐伯はそんな俺を見抜いてるかのように。


「あんときのお前も、今のお前も同じお前なんだしさ?

むしろ、俺は今のお前のが気に入ってるし

だから覚えてないこと、もう気にすんな?」


そう言いながら、照れたようにそっぽを向いて、ペットボトルのサイダーをプシュッと開ける。


学校が終わった後の近くの公園での寄り道は、すっかり恒例になっていた。


夏の長い夕方の時間にも関わらず、俺たちは日が暮れるまで喋り続けた。


そして佐伯はいつも俺の欲しい言葉をサラッと言ってくれる。


逆に俺はこいつの欲しい言葉を言ってやってるんだろうかと不安になりながら、それでも佐伯の言葉に一喜一憂してる自分がいる。


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