あの夏の季節が僕に未来をくれた
俺を俺だと認識して、俺だから友達になったんだと言ってくれた佐伯に、迷惑をかけたくないと思うのはエゴだろうか?




「雅紀?起きた?

そろそろ起きないと遅刻しちゃうよ?」


そう声をかけられて、ベッドのひんやりした場所を足で探しながら微睡んでいた俺は、今度こそパッチリと目が覚めた。


母が部屋にまで起こしに来るのは珍しい。


ということは、完璧に寝過ごしたということだ。


ガバッと起き上がり、母に礼を言うと、急いで着替え始める。


チラッと机に置いてある目覚まし時計に視線を移すと、秒針は止まったままだ。


(――っくしょ!電池切れかよ!)


チッと舌打ちをしながら、ドアの方を見やると、母はもういなかった。


制服に着替え終わると、急いで洗面所に向かう。


本当はいつもと順番は逆だけど、そんなことは言ってられない。


歯みがき粉を制服につけないように注意深く磨いた後、顔を洗う。


ついでに髪の毛も濡らして寝癖を直した。


ふぅ~と一通り準備が終わるとリビングに向かった。


母が朝食の仕度をしている。


父はすでに会社に出掛けたようだった。


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