あの夏の季節が僕に未来をくれた
だけど相変わらず家ではギクシャクしている。


母も父も必要以上には話しかけてこないし、俺も必要以上のことは話さない。


だからさっきみたいな居心地の悪い気分を味わったのも初めてじゃなかった。


母も俺の扱いに困っているのがわかる。


だけどだからといって、俺だってどう接していいかわからない。


いつも弟が間に入ってくれていたから、俺一人じゃどうしようもないんだ。


ハァ~と大きな溜め息をつきながら、自転車に跨がった。


少しだけ走り出してから、弁当を手渡されなかったことに気付く。


高校に入ってから、母が弁当を作らなかった日は一度もない。


きっとさっきのバタバタした中で、渡すのを忘れたんだろう。


一旦自転車を止めて、弁当を取りに戻るかどうか考えた。


せっかく作ってくれたんだろうけど、朝食も食べずに慌ただしく飛び出してきたのだから、今さら戻るのは気まずい。


しばらく悩んだけれど、雅紀はやはりそのまま学校へと自転車を走らせた。


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