あの夏の季節が僕に未来をくれた
昼休み――


いつものように佐伯がやってきた。


仲良くなってからは、こうして一緒に弁当を食べることが多い。


後から何人か他のやつらもやってきて、だいたい5、6人で机を囲む。


それぞれが弁当を出し始めた時、俺はゆっくり立ち上がった。


「あれ?今日は弁当じゃねぇの?珍しいな?」


「あぁ、持ってくんの忘れちゃってさ

購買まで行ってくるわ」

そう言って曖昧に微笑むと、俺は購買へと急いだ。


はっきり言って、購買に行くこと自体初めてで、勝手がよくわからない。


昇降口の傍にある購買は、昼時だけあって大賑わいだった。


とてもそこに飛び込んで行く気にならなくて、少し離れた場所で人が引くのを待っていた。


「雅紀!」


そう呼ばれて振り向くと、昇降口の向こうにある正面玄関に、母の姿があった。


「……母さん!どうしたの?」


驚いてそう言いながら、母の方へと歩み寄る。


ハァハァと息を弾ませながら、額に汗を浮かべている母を見て、走ってきてくれたんだと胸がチクッと傷んだ。


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