あの夏の季節が僕に未来をくれた
最初の試験が終わり、休み時間に保健室に足を運んだ。


他の奴らも一緒に来ると言い張ったけれど、動揺させたくなくて丁重に断った。



保健室のドアを開けると、弟が真っ青な顔をしながらも、さっきよりは落ち着いた様子でベッドに横たわっている。


養護の先生は、俺を見るとビックリしたように弟と見比べて目をパチパチさせていた。


俺たちはそんな反応には慣れていたけれど、あまりにも驚く彼女が可笑しくて思わず同時に吹き出してしまった。


それから彼女を納得させるために説明する。


「双子なんですよ、一卵性双生児ってやつです」


彼女はようやく合点がいったように笑ってから、弟の様子を話してくれた。



まだ、新卒なんだろうか?


白衣を着て貫録を出そうと頑張ってはいるが、笑顔はまだあどけなさが残っている。


「とりあえず発作は治まったけど、教室で試験を受けるのは無理そうなの

他の先生に相談して、次の教科からここで試験を受けることにしたから、あなたは心配しないで教室に戻って?」



ここで?そんなことが出来るのか……


ホッとして弟の方を見ると、まだ青白い顔で力なく笑ってる。


まるで大丈夫だからとでも言ってるようだった。


「じゃあ、帰りにまた迎えに来るから

先生、よろしくお願いします」


俺はそう言って頭を下げると、弟に「じゃあな」と小さく手を振って保健室を後にした。
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