あの夏の季節が僕に未来をくれた
生きてる時、俺はいろんな話を母にも父にもしていた。


それが、病気の俺をいつも心配してくれていた両親への俺なりの気遣いだった。


まあ、女子との絡みはさすがに話さなかったけれど。


今日学校で起きたことや友達のことなんかを面白おかしく事細かに伝える習慣がいつの間にかついていた。


将来のこともそれなりに語ったりしたっけ……


今じゃ叶わない夢だけど、そうすることで父は嬉しそうに……


母はホッとしたように……


息子が世を儚んではいないのだと、安堵する笑みを浮かべるのを見ているのが好きだった。


対して兄貴は、そんな俺の様子を横目で見ながら、自分のことは一切喋らない子供だった。


逆に俺が話すことに乗っかって補足するような。


俺の保護者のような口ぶりで。


そんな俺たちを、父も母も目を細めて、仲のいい兄弟を誇りに思うように嬉しそうに。


片方がいなくなれば崩れてしまうような危うい関係なんだとは疑いもせずに。


病気の弟としっかりした兄の図式を美談のように。


見ていたに違いなかった。


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