あの夏の季節が僕に未来をくれた
最近の兄貴は帰りが早い。


部活は引退しているし、塾に行ってるわけでも、バイトをしているわけでもないからだ。


とはいっても学校が終わって真っ直ぐ家に帰れば4時くらいには帰れるはずだから、寄り道はしている。


最近は佐伯と公園で話し込むのが日課になってるらしい。


俺の思惑通り、兄貴は佐伯に、佐伯は兄貴に惹かれ合っているように見えた。


お互いを信頼しあって真剣な話も出来るような仲になりつつある。


兄貴の側はまだ自分の本音をさらけ出しているわけじゃなかったけど。


それは、さらけ出してしまえば嫌われるんじゃないかという防衛本能が働いている証拠でもあって。


佐伯を失いたくないと、兄貴が思っている証拠でもあった。


だから兄貴に親友を作るという俺の目的は、一応成功したようなものだ。


学校では見違えるほど明るくなったし、何より楽しそうに見える。


生きてたときには見せたことの無かった兄貴の本当の笑顔は、俺をひどく傷つけたけど。


それでも心から良かったって思えたんだ。だからこんな顔が兄貴にも出来るってことを、父さんや母さんにも見せてやりたかった。


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