あの夏の季節が僕に未来をくれた
寝る前は特にハチミツと生姜を入れたジンジャーティーを。


体が温まるからって無理矢理飲まされたっけ……


最初は生姜の味が口に合わなくて、よく顔をしかめたけど。


だんだんそれがクセになって、普通の紅茶じゃ物足りなくなった。


そんな懐かしい母の味を、久しぶりに飲んでみたかったというのが本当のところだ。


兄貴だったら、いらないって一言で片付けていたのかもしれない母の問いかけに。


俺は生きていた頃のまんまで答えていた。


それがどんな意味を持つのかなんてよく考えもせずに……




いい香りが鼻を掠めてすぐに、母が2つマグカップを手にして戻ってきた。


はい、とマグカップを手渡されて、ありがとうと答えて受け取る。


久しぶりに飲むジンジャーティーはすごく美味しくて。


少し不思議そうに俺の顔を見ていた母の視線にまったく気付かなかった。


「やっぱり、母さんの淹れてくれた紅茶は美味しいな」


いつものマグカップ、いつもの会話、いつもの……


そこでようやく俺はハッとした。


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