麗しの彼を押し倒すとき。
いい加減離せっ!
そんな思いで必死に柚羅の腕から抜け出すと、「まぁ、柚季ならすぐに友達できるよ」優しく頭を撫でてくれた。
懐かしいその行動に、どこか胸が温かくなる。
新しい地で不安ばっかりの時も、お兄ちゃんにそう言われると何故か安心できた。
「行ってきます!」
スクールバックを手にとって、ローファーに足を突っ込む。
ドアノブに手をかけて外の空気に触れる一歩手前、「あ、そうだ」思い出したように柚羅が口を開いた。
「ん、なに?」
「いや、そういえば忘れてた」
柚羅の口元が、楽しそうに弧を描く。
「いるんだよ、柚季の通う高校に。あいつらが」