麗しの彼を押し倒すとき。
そこにお兄ちゃんがケチャップでハートを描くと、私のほうへくるりとお皿を回した。
「じゃーん。柚季専用特製スペシャルオムライス!」
「え、めっちゃおいしそうじゃん!お兄ちゃん凄い!」
ハートとかそのネーミングセンスとか、突っ込みたい所は色々とあったけれど、おいしそうなオムライスを前にそんなものはどうでもよくなった。
渡されたスプーンでふわふわのオムライスを掬うとさっそく口に運び、舌に広がった幸せに思わず顔をほころばせる。
「すっごいおいひい!」
「マジで?俺天才じゃん」
お兄ちゃんは私の言葉が相当嬉しかったのか、自分の分を持ってくると同じように食べ始めた。
目の前で頬張る柚羅の姿に、さっき言っていた言葉を思い出す。
…確かに、本質は変わらないかも。
昔から変わりなく私を可愛がってくれるお兄ちゃんは、今もこんな感じでシスコンを発揮してる。
みんなが変わってしまったように感じていても笑った顔とかどこか懐かしくて、少し昔を感じさせるとこもあった。
ゆっくり探して行こう。
彼らと再会して戸惑うことはたくさんあったけれど、それでも昔一緒に遊んでいた幼なじみには変わりないのだから。