麗しの彼を押し倒すとき。
にっこり笑う波留くんに促されて、私は大人しく歩きだした。
学校にこの幼なじみがいるってだけでも不思議なのに、一緒に登校なんて変な感覚になる。
隣を見ると一人だけ涼しい顔した椿、まだ眠そうななっちゃん、にこにこ笑顔の波留くん、朝でも何考えてるのかわからない凪ちゃんがそろって歩いていた。
昨日から一日経ったけれど、やっぱりこの光景に違和感しか感じないのは私だけなのか。
「あのさ波留くん」
「ん、なに?」
「手、いつまで繋いでるの」
さっきから繋がれたままの手を持ち上げて聞くと、「教室まで」そう悪びれることなく笑顔を返す。
「波留くんさ」
「なに」
「これってセクハラって言うんだよ」
「やだな柚季っち。それは一方的な強要の場合でしょ」
「これのどこが合意的に見えるの」
手を振り払うとわざとらしく傷ついた顔をする。
その表情にそういえば彼が隣の席だったということを思いだした。
「波留くん以外昨日見かけなかったけど、みんな違うクラスなの?」
隣にいた椿に問うと、「俺と波留はCで凪と棗がB」ずれた眼鏡を中指で押し上げて答えてくれる。
「…ってことは椿も一緒のクラスなの?」
「あぁ」