麗しの彼を押し倒すとき。



…ちょっと、学校を出れば安全だと言ったのは誰ですか。


帰り道。私はモンブランを通り過ぎて、家まであと3分といったところで思わぬ足止めを食らっていた。

ここまで最新の注意を払ってきたのに何でこうなるんだ。神様、これも私の詰めが甘いのが原因なんですか。

目の前の現実離れしすぎた光景に頭が痛くなる。



「お前分かってんのか」


数メートル先から聞えてきた言葉に、今すぐその押さえつけられている後ろの塀をぶち破って、彼ごと連れ去ってやりたくなる。

どうやらこの人達が騒がれるのは、学校の中だけではないらしい。


なんでそんな人間にまで注目されてんだあんたは!

ごつくて鼻息の荒い物騒な男に胸倉を掴まれ、コンクリート塀へと押しつけられている棗にそう叫びたくなった。



さかのぼること十秒前。

家に続くわりと静かな通りを曲がると、開けた視界にやたらデカイ体格の男が壁に向かって手をついていた。


これはまさか……世に言う壁ドンってやつですか!?
生で見たの初めて!

と、現実ではなかなか見ない光景にテンションが上がった、ここまではまだ良かった。

その壁ドンされてる相手が悪かった。


目を凝らしよく見ると、それはなんともウザそうに男を見上げる棗だったのだ。

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