麗しの彼を押し倒すとき。
恥ずかしい…。
今日はやっぱり、ツイてないのかも知れない。
共学の学校ってこんな感じだったけ?
冷やかすような周囲の声に、考えてもまとまらない疑問ばかりが浮かび上がる。
慣れない環境に戸惑いながらも、とりあえずは顔に笑顔を貼り付けておいた。たぶん完全に引きつってしまってただろうけど。
「じゃあ、桐谷はそこの席な」
一抹の不安を胸に、私は指定された席へと足を進めた。
う…視線が痛い。
編入先でこんなにも注目を集めるのは久しぶりかもしれない。
ある意味女子校なんて女しかいない分、周りの目はあまり気にしないって言うのが普通だったけど。
ここは共学。そう言うわけにもいかないらしい。
「あ!桐谷さんよろしくー!」
席に近づくと、私の席の後ろにいた男の子が笑いながら手を振っていた。
「よ、よろしく…」
ぎこちなく返して机の上に鞄を置くと、椅子を引いて席に座る。
何だかやっと一息つけそうな気分。
とりあえず自分の席について周りの目から逃れると、少し心が落ち着いた。