麗しの彼を押し倒すとき。


恥ずかしい…。

今日はやっぱり、ツイてないのかも知れない。

共学の学校ってこんな感じだったけ?


冷やかすような周囲の声に、考えてもまとまらない疑問ばかりが浮かび上がる。

慣れない環境に戸惑いながらも、とりあえずは顔に笑顔を貼り付けておいた。たぶん完全に引きつってしまってただろうけど。



「じゃあ、桐谷はそこの席な」


一抹の不安を胸に、私は指定された席へと足を進めた。


う…視線が痛い。


編入先でこんなにも注目を集めるのは久しぶりかもしれない。

ある意味女子校なんて女しかいない分、周りの目はあまり気にしないって言うのが普通だったけど。

ここは共学。そう言うわけにもいかないらしい。



「あ!桐谷さんよろしくー!」


席に近づくと、私の席の後ろにいた男の子が笑いながら手を振っていた。



「よ、よろしく…」


ぎこちなく返して机の上に鞄を置くと、椅子を引いて席に座る。


何だかやっと一息つけそうな気分。


とりあえず自分の席について周りの目から逃れると、少し心が落ち着いた。



< 32 / 162 >

この作品をシェア

pagetop