麗しの彼を押し倒すとき。



四限目終了のチャイムが鳴り、昼休みへと入る。



「うー、何か疲れた」


机の上で腕を前にして軽く伸びをした。

肩甲骨から背骨の筋肉まで、一気に固まっていた物がほぐれるような感覚にあくびまで出そうになる。

教科書を鞄へと仕舞っていると、次々に教室から生徒が出ていくのが見えた。



「もー腹減った」

「まじ毎日昼休みまで地獄の時間だわ」


数人のグループとなって出ていく後ろ姿を見ていると、どうやら学食へ行こうとしているのが分かる。



「ねぇ、ちょっと学食行く前にトイレ行っていい?」

「あーうん。あたしもちょっと化粧直したいんだよねー」


ぼんやりその様子を眺めていると、教室に残っているのはカラフルなお弁当を広げている弁当組と、私。

そしてまだ隣で会話を続けている波留くんと、その女子数人だけになっていた。


……あ、もしかして出遅れたかも。


転校してくる前。つまり女子校時代、いつもは大体お母さんがお弁当を持たせてくれていた。

けれどその母も今やパリ。

朝の短い時間で支度をして、プラスお弁当を作るなんて技術持ち合わせていない私には、これから毎日学食で昼食を済ませる、という課題が出来た。

柚羅に聞いたところ、愛蘭高校の学食は中々レベルが高いらしいけれど。

今の私にしたらぼっちで学食、という違う意味でもっとレベルの高い問題を乗り越えなくちゃいけない。


< 40 / 162 >

この作品をシェア

pagetop