麗しの彼を押し倒すとき。

モンブラン




「……あっ、…痛っ」

「あぁ、悪い。ちょっと強くしすぎたな」


椿が私の脚を持ち上げながら言う。

触れている部分から熱が伝わり、恥ずかしくなって身体全体が熱くなった。



「きつくて…入らないな」


困惑しながらも一生懸命な椿に、なんだか申し訳なくなる。



「柚季力抜いて、ちょっとだけ我慢して」

「……うん」


その言葉に頷いて椿に全てを任せると、少しの痛みの後、中にぐっと押し込まれて窮屈になる。



「……つ、椿ごめん、やっぱり痛い…お願い抜いて」


あまりの痛みに軽く叫ぶと、椿がそっと私の足からローファーを抜いて脱がしてくれた。


放課後、下駄箱の前。

私は痛みのせいで一人で履けなかったローファーを、椿の手を借りてどうにか履こうと奮闘していた。

今のように頑張れば履けないこともないけれど、押し込むと激痛が走る。

あの時捻った私の右足は、時間が経つにつれ、思った以上に腫れたようだった。



「やっぱ無理だな、おぶってく」

「えっ!やだやだ!」


首を振って否定すると、「少しの我慢だろ」椿が私の足元にしゃがみ込んで後ろに手を伸ばした。



「柚季、早く」


後ろにしている手の指を折り、ちょいちょいと促す。

そうこうしているうちに周りの視線も強くなり、逃げ場もなくなり、もうどうにでもなれ!と勢いで椿の首に腕を回した。

一瞬でふわりと体が持ち上がり、太ももを支えられ、その触れられた部分からぞくりと変な感覚が身体を走る。



「自転車までだから」


私をなだめるように言った椿の声は、彼の背中を伝わりより近くに聞こえて、とても恥ずかしくなった。
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