麗しの彼を押し倒すとき。
何かがおかしい
「もう、何でこうなるの」
朝、溜息を吐きながら、新しい制服に袖を通した。
分かっていた事だけれど、“それ”に直面するとまた不満がこみ上げる。
「まぁ、そんな怒るなって。可愛い顔が台無しだ」
「お兄ちゃん…きもい」
本気か冗談か分からないことを言い、モカブラウンの髪をかきあげる。
私の眉間に指を当てるとにっこりと笑った。
桐谷 柚羅(きりたに ゆら)
私のお兄ちゃんで、現在大学2回生。
笑顔を作るその顔は、我が兄ながら毎度整っているなぁと少しうらやましくなる。
運動神経もいいし、頭もいいし、料理も出来る。
ほんとに完璧だと思う、ただ一つを除いては。
「久しぶりだなぁ柚季!」
「ちょ、痛い!痛いってば、バカ!」
お兄ちゃんは私の頭を散々撫でた後、嬉しそうに力いっぱい抱きしめる。
そう、私の兄はシスコンだ。