麗しの彼を押し倒すとき。


勢いよく手を伸ばした私は椿の口元を塞ぐことに成功し、安心したのもつかの間、そのまま勢い余って椿ごと後ろへ倒れ込んだ。



「わっ……」


慌てて体制を立て直そうと思っても遅かった。

完全とは言わないものの、私の下敷きになった椿の頬が赤く染まる。

どうやら椿が照れ屋なのは変わってないらしい。


私はちょっとした反撃が出来たと少し喜んでいた。……けれど、喜ぶのはまだ早かった。



「男を押し倒すのが趣味だったのか」


周りが固まる中、そんな言葉を発したのは凪ちゃんだった。

静かに彼の方へ向くと、あの無表情ではなく口元を上げ笑っている。

少しの間その言葉が理解できずに凪ちゃんを見つめていたけれど、すぐに私の顔は椿以上に紅潮した。



「なっ……ち、ちが…」

「違うの?さっきも俺のこと押し倒したのに?」


……何を言い出すんだあんたは!

私はとうとう耳まで真っ赤になり、急いで固まっている椿から身を退けた。


と、同時に波留くんとなっちゃんが、「「…はぁ!?」」仲良くそろって叫んだ。


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