麗しの彼を押し倒すとき。
「どういうこと柚季っち!」
「いや、あれはちょっとした事故で……」
「本当に凪を押し倒したの!?」
「…だ、だから」
「俺というものがありながら…!」
…いや、いつあなたのものになったんですか。
もともとは波留くんが校門でぶつかって来た時に捻った、この右足のせいですよ。そう言いたいのをどうにか堪え、混乱しているこの場を押さえようと試みる。
「嘘言わないでよ凪ちゃん!」
「何で?事実だけど」
「じ、事実かもしれないけどちょっと話盛ってるじゃん、それ」
「……誰もいない部屋で押し倒してきたのに?」
「ちょ、誤解…」
今日一日、感情のあまり見えない彼を多く見ていたからか、口の端を持ち上げ続ける凪ちゃんをみて、心底楽しんでるんだろうなと思った。
押さえるどころか今の言葉でヒートアップする周りに、収拾がつかいまま勝手に話が進んでいく。
「今の話は本当か、柚季ちゃん!」
そこになっちゃんがさっき頼んだプリンアラモードを手に、ジョニーさんまでもが現れて、もうこれはダメだと溜息をついた。