麗しの彼を押し倒すとき。


「どういうこと柚季っち!」

「いや、あれはちょっとした事故で……」

「本当に凪を押し倒したの!?」

「…だ、だから」

「俺というものがありながら…!」


…いや、いつあなたのものになったんですか。


もともとは波留くんが校門でぶつかって来た時に捻った、この右足のせいですよ。そう言いたいのをどうにか堪え、混乱しているこの場を押さえようと試みる。



「嘘言わないでよ凪ちゃん!」

「何で?事実だけど」

「じ、事実かもしれないけどちょっと話盛ってるじゃん、それ」

「……誰もいない部屋で押し倒してきたのに?」

「ちょ、誤解…」


今日一日、感情のあまり見えない彼を多く見ていたからか、口の端を持ち上げ続ける凪ちゃんをみて、心底楽しんでるんだろうなと思った。

押さえるどころか今の言葉でヒートアップする周りに、収拾がつかいまま勝手に話が進んでいく。



「今の話は本当か、柚季ちゃん!」


そこになっちゃんがさっき頼んだプリンアラモードを手に、ジョニーさんまでもが現れて、もうこれはダメだと溜息をついた。

< 97 / 162 >

この作品をシェア

pagetop