麗しの彼を押し倒すとき。
「柚季っち今度押し倒すなら俺にしてね、いつでも24時間オッケーだから」
波留くんが私の手を取りウィンクする。
「あんたやっぱり柚季じゃないでしょ?あの柚季ちゃんがそんなことするはずないしね」
なっちゃんが信じられないと舌を出す。
「途中参加の俺にも分かりやすく話してよ。ほら、柚羅に報告しないといけないかも知れないし」
ジョニーさんがプリンアラモードを机に置く。
「……あ、そういえば胸も触られた」
「「「……は?」」」
続けて凪ちゃんが口にした言葉に、3人が同時に反応を見せた。
未だ固まっている椿以外の人間が、好き勝手に喋りだす。
もう誤解されて恥ずかしいとか悲しいとか、そんなのはどうでもよかった。
ただそれが、私の中で怒りへと変わるのに十分な要素だったんだと思う。
「うるさいっ!」
一喝した声で、さっきまでの雑音が一瞬で消え去った。
目を丸くした彼らがこちらを向き、凪ちゃんだけがまだ口元に笑みを張り付けて笑ってる。
「とりあえず、誤解だから」
勤めて怒りを鎮めるように口にした。
勢いで立ちあがってしまったため席に着くと、それが合図かのように固まっていた彼らが動き出す。
「そういえば、柚季っちって昔から怒ると結構怖かったよね」
大人しくなった波留くんが呟くと、「うん」と素直になっちゃんがプリンアラモードをスプーンで掬った。