麗しの彼を押し倒すとき。


とりあえずはこれで私の押し倒し事件も、実は女と思っていました事件も解決した。たぶん。

少し強引ではあったけど、闇に紛れることとなった二つの事件にホッと胸をなでおろす。

やっと静かになったその空間で、ジョニーさんは逃げるようにカウンターへと戻っていった。


凪ちゃんはまたコーヒーに手を伸ばし、波留くんは女の子とデートの約束に忙しいのかスマフォを弄り、なっちゃんは甘そうなプリンアラモードに夢中になって、椿はやっと動けるようになったのか身体を起こした。

これで全て元通りだ。

私の事件は完璧に闇へと葬り去られた。



「で、椿はさっきなに言おうとしてたの」


なっちゃんがプリンの上にあったさくらんぼを持ち上げて、まるでついでといった感じで聞く。

その瞬間ひやりと背中が冷たくなった。



「あぁ、柚季が女だって思ってたことだ」

「……はぁ?思うもなにも、こいつ一応は女でしょ」

「そうじゃなくて、俺らが」

「……言っている意味分かんないけど」

「だからこの9年間、俺らのことを女だって思ってたらしい」

「誰が」

「柚季が」

「へぇ、そうなんだ」

「そう」

「………って、はぁ!?」

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