いちご大福
「ネオン?おーい、起きてるー?」
希美が目の前で手を振っている
「あ、ごめんごめん。ぼーっとしてた?」
「うん、大丈夫?体育あとからずーっとこんなかんじなんだけど」
そういえばお弁当の中身が全然減ってない
たこさんウインナーがこっちをむいている
「なんか悩んでるんでしょ」
いつもは鈍感で困るくらいなのに
珍しく希美が鋭い
「ネオンがいいなら話してみて、楽になるかもしんないからさ」
希美はこういう時優しくて頼りになる
思い切って今までのことを全部話した
蓮お兄ちゃんのことも
保健室の先生のことも
「そっかぁ…」
希美は空を仰いだ
こんなことになってるなんて、言ってなかったからなぁ
「ん~、いいんじゃない?」
―――――?!!
「一生は一回しかないんだから。別にそのくらいなら許されるんじゃないかな」
希美は得意のウインクを飛ばしてきた
「そっかぁ…」
恋愛の達人の希美が言うからなんかあーもこーも言えない感じがする
一生は一回かぁ…
「まぁ、祐也のことも考えてあげなよ?」
「そうだよね…うん、祐也と別れるのは嫌だもん。やっぱりちゃんと二人共なんとかしなくちゃね」
あたりまえじゃん…
祐也がいるのに2人も微妙な関係にあるなんて
卑怯すぎる
「そんな落ち込むなってー!!よくわかんないけど、二人ともいい人なんだろうし。ネオンに惚れる人なんていい人に決まってるよ☆」
「いや、保健室の先生は犯したいとか言ってたから体目当てなんだ、多分」
そう言った瞬間、希美がハッとした表情に変わった
「保健室の先生イケメンって有名だけど、気をつけたほうがいいって噂も多いからなぁ」
「そうなの?!」
希美は小さく頷いた
「女の子を片っ端からもてあそんでるらしいから。ネオン見たいな清純なの、ほうっておけないんだろーなー」
希美はなぜかひとりでうんうん納得している
私はそんなに清純でないと思ってたが…
――――――――キーンコーンカーンコーン
「チャイムなっちゃった。ありがと希美!」
弁当を包んで立ち上がった
「ううん、なんかビックリしちゃった。あんな奥手なネンがこんなになってるなんて」
私だって正直びっくりだ
短期間でこんなことになるなんて
「私も恋がんばらなくっちゃね♪」
希美は長い髪を風になびかせて笑った
ほんと、絵になる顔…
「まーた、私の顔まじまじ見る~!!!」
希美は頬をふくらませておこった
こうゆう馬鹿馬鹿しいやり取りして
なんか青春ってかんじだなぁ
「さ、教室戻ろっか」
「そうだね」
屋上の階段をふたりでかけ降りた
息も上がらないし
体もよくなってるみたい
こんな日々が続けばいいと
思っていた