いちご大福

綱引き





「おはようございま~す。ネオンちゃーん検温の時間ですよ~?」


目の前がパアッと明るくなって


眩しくて目を覚ました


「おはよー。真美ちゃん」


目をこすりながら時計を見ると、もう10時


昨日なかなか眠れなかったからなぁ…


「昨日遅くまで起きてたでしょ~?」


「えーバレてたの?」


「うん。帰るときに窓辺に座ってるネオンちゃんが見えたから…」


そう言いながら真美ちゃんは体温計を渡してきた


「顔色悪いけど…大丈夫?昨日何かあった?」


「ぇ?!そぅ?」


正直昨日のことは覚えていない


というか、分かんなかった


「具合が悪くなったらすぐ言ってね…?あ、体温計なったよ~」


脇に挟んでいた体温計には見たくない数字が並んでいた


また退院できなくなる…


「ん?ネオンちゃん体温計見せて?」


「見せたくない…」


「あ!退院しなくてもいーんだー」


しぶしぶ体温計を渡すと案の定苦い顔になった


「お願い。先生だけはよばないで?…ね?」


「でも私じゃどうにも…先生呼んでくるね。待ってて」


「待って!真美ちゃん!!」


叫んだときにはもう遅かった


「んぅっ…はぁっ」


とは言ったものの…


熱が上がってるみたいだ


呼吸がおっくう…


「ネオン?!」


走りながら蓮お兄ちゃんが入ってきた


やだ…


「辛いだろ?ごめんな、ちょっと診るから」

蓮お兄ちゃんは私の手首をつかんで脈をはかり始めた


医者の顔になってる…


「大丈夫だから…熱ある以外は…」


「いや。大丈夫じゃない。真美!点滴バックと吸入持ってきて」


蓮お兄ちゃんは真美ちゃんのこと真美って呼ぶんだ…


いつからそんなに女性慣れしたんだろう


「また退院遅くなるのかな?嫌だよそんなのぉ…」


なんだか泣きそうになってきた


「泣くなよ。大丈夫だから。俺が治してやるから、すぐに」


「うん…すぐに退院できる?」


「俺と、お前次第だな。ぁ、真美。ありがと」


真美ちゃんがいろいろと持ってきた

「ぁ、先生もう診察の時間なんですが…残りは私が」


真美ちゃんが申し訳なさそうにいってきた


「ネオン優先だから。何とかしといて」


真美ちゃんの方に振り向かず答えた


「ダメだよそんなの!真美ちゃんにして欲しいから、蓮お兄ちゃんは戻って!」


半分叫んで言ったから呼吸が苦しい


正直なところ昨日あんなこと言われて蓮お兄ちゃんと二人きりになるのは気まずい


「わかった。でも、何かあったら呼べよ。」


「・・・ぅん。行ってきて」



蓮お兄ちゃんは小走りで病室を出て行った


「ごめんね真美ちゃん。忙しいのに…」



「謝らないでよー。大丈夫だよ?」



真美ちゃんは慣れた手つきで点滴の針を腕に刺した


「上手だね真美ちゃん。」


点滴ぎらいのわたしでも気付かないくらい上手だ


「そうかなー?でも蓮先生の方が上手でしょ?」



「ううん。正直刺すのだけは下手(笑)」



真美ちゃんはいつもの笑顔で帰っていった


















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