空の果てへ


「市、村さんが付き合ってくれないって言うなら・・・」



再び、顔を真っ赤にした優輝さんが部屋に戻ってきた。


手に、キラリと光る物体を持って。


それを、自分の喉元に突きつけて。


まるで、何年も前に見た昼ドラのような光景。


本当に、嵐どころではなくなってきた。



「ちょ、おい!!」


ばっと包丁を奪おうとするが、その度にグイグイと包丁の切っ先を喉に当てる。


この状態では、何も出来ない。


その瞬間、屋上の縁に立つ絢の姿が頭をよぎった。


最後に、泣きながら笑った姿。


頬に伝う、透明な涙。


鮮明に、全てフラッシュバックする。


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