鐘つき聖堂の魔女
今回もどうせ自分の想いを口にすることなく、円満な関係で終わらせるのだ。
それが一番無難で幸せな選択なのだから。そう、それでいいのだ。
いいはずなのに…―――
(消えない……)
暗示は効かず胸に突き刺さった小さな痛みも消えなかった。
その後、いつの間にかカルデアが完成し、味見をした。
口に入れるとほぐれるほど煮た鶏肉と甘辛い味付けが絶妙でとても美味しかった。
しかし、リーシャの心はそこになかった。
料理のメモは途中で止まっており、後半の手順はよく覚えていない。
ピーナッツペーストはいつ入れたのか。粉唐辛子はどれくらいの量だったのか。
(また、教えてもらわなきゃ…)
リーシャはメリアーデに悪いと思いつつ、カルデアを口に運び続けた。
その想いの決着がまさかあんなに早く訪れるとも知らずに…―――