鐘つき聖堂の魔女
「何であんなところで倒れてたの?この街の人ではないみたいだけど…あなた何者?」
「俺はライル。隣の国の商人でドルネイには食料の買い付けに来ていたんだが、その途中で山賊に身ぐるみはがされてしまってね。買い付けのための資金も全部持って行かれた」
それで何も持っていなかったのか、とリーシャは納得する。
「商人だったのね。隣の国ってネイアノール?それともアルデリア?」
「ネイアノールだ」
「身ぐるみ剥がされた状態でよく検問を通ることが出来ましたね。ドルネイの検問は厳しくて有名なのに」
「まぁ何とか。入れたはいいもののあんな事になってしまったけどね」
肩をすくめた男、ライルは焦るどころかマイペースに笑っただけだった。
余程肝が据わっているのか、ただ鈍感なだけなのかは読めない。
「あなたすごく熱が高くて、尋常じゃなかったけど、大丈夫?」
「あぁ…多分風邪だ。ドルネイに入る前からこじらせてしまって、街に入って気が抜けたのかもしれない。早朝にはドルネイ入りしたから半日は気を失っていたことになるな」
「半日もあんなところに…それは悪化しても仕方ないわね」
そうはいったものの、正直なところリーシャはライルの言うことを完全に信じたわけではなかった。
というのも、リーシャは魔女に生まれ、何度も人に騙され、裏切られることが多かったため、ある程度ならどういう性質の人間かも分かるようになったのだ。
ライルという男は一見柔和で優しそうな雰囲気だが、その完璧なまでの顔が象る笑みの裏に何か隠している様にも見えた。